このページでは、鈴木清一の作品を毎月一点づつ取り上げ、作品にまつわる話題などとともにご紹介していきたいと思います。
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2003年5月号の「今月の一枚」は『布引の新緑』(1974年)をご紹介します。
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▲鈴木清一作
『布引の新緑』(1974年頃) 油彩・色紙、27.2×24.2cm 個人蔵(厚木市) |
JR山陽新幹線の新大阪駅を発車した下り列車が、工場や人家の密集する市街地を駆け抜けて武庫川を渡り、阪急電鉄今津線の線路を跨いだ後に六甲トンネルへ入ります。列車はしばらく暗闇の中をひた走り、やがて速度を落としながら長いトンネルから抜け出して停車したところが新神戸駅です。
駅の南側は都市化が進んでいますが、反対の北側はこの絵に描かれているような緑したたる布引山です。駅を挟んでまったく別の世界が広がっているのです。新幹線の駅にはコンクリート・ジャングルに囲まれたところが多いのですが、この新神戸駅だけは例外で、中でも新緑のころの車窓からの眺めはまことに見事です。ただし、列車が新神戸駅を発車するとすぐに新神戸トンネルへ入ってしまうので、すがすがしい気分に浸れるのはごくわずかな間だけなのですが‥‥。
清一は新緑の季節の布引山の風景が非常に気に入っていたようで、1960年代後半から1970年代前半にかけて、この作品以外にも同じモチーフの風景画を繰り返し描いています。当時、清一は布引にごく近い神戸市葺合区(現・中央区)熊内町の明照幼稚園で、毎週日曜日に園児と母親たちに絵を教えていたので、彼は美しい緑に覆われたこの山をいつも眺めていたのです。
![]() ▲鈴木清一作『初夏の山』(1970年頃) 油彩・板、24.2×33.4cm 個人蔵(明石市) |
![]() ▲鈴木清一作 『布引の新緑』(1974年) 油彩・色紙、27.2×24.2cm 個人蔵(西宮市) |
清一が鉛筆で走り書きした一冊の小さな手帳が残っています。
1956年頃に電車の中などで書き綴ったもののようですが、普段から考えていたことや遠い昔の思い出などが記されており、なかなか興味深いものがあります。その中の一つに新緑の季節を賛美した『晩春初夏』という手記があります。
少し長いのですが、清一の自然を見つめる優しさがよく伝わってくるので、全文をご紹介することにします。
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