バックナンバー 2004年 2月号


このページでは、鈴木清一の作品を毎月一点づつ取り上げ、作品にまつわる話題などとともにご紹介していきたいと思います。

2004年 2003年
1月:『自画像』 12月:『少女』 
11月:『秋深まる』 
10月:『染付け皿と秋果』
9月:『窓からの風景』 

8月:『石廊岬』
7月:『婦人像』
6月:『水戸弘道館』 
5月:『布引の新緑』
4月:『山ざくら』
3月:『水仙』

2月:『早春の六甲』
1月:『小菊』
2002年  2001年
12月:『根室原野の鶴』
11月: 『筑波山』 
10月: 『篠原本町の庭』   
9月: 『八千代像』  
8月:『九歳の八千代』  
7月:『会下山風景』
6月:『舞子の松』
5月:『赤い本』

4月:『菊池辰重氏像』
3月:『代々木風景』
2月:『春のうた』
1月:『雲と牛』
12月:『天王山農場』
11月:『初秋』

10月:『月見山風景』
9月:『孔雀』

今月は、『早春』をご紹介します。



鈴木清一作『早春』(1970年)
油彩・キャンヴァス、50.0cm×60.6cm
個人蔵 (水戸市)



 水仙と紅椿とは清一がもっとも好んで描いた花でした。彼はこの愛らしい花をお気に入りの花瓶に活けて繰り返し描いていますが、この作品のようにつくばい(茶室の庭先に低く据え付けられた手水鉢)に添えた作品も何点か残しています。
 いかにも無造作に投げ込まれた水仙と椿の清楚な色彩と、苔に覆われたゴツゴツの自然石とのコントラストが目を惹きます。ひっそりと静まり返った空気、丸い小さな水面には晴れた空が映っています。つくばいの右後方では紫陽花が芽を吹き始めています。季節は2月頃なのでしょうか。

 画面右下に「清一 1970」の文字があり、キャンヴァスの裏面には「早春 昭和45年 清一作」と墨書されています。さらに額の裏蓋には「道子さんに贈る 昭和49年8月29日 清一」という献辞が記されています。清一はこの絵を1970(昭和45)年に描いてからしばらく手もとにおいていたのですが、4年後に郷里・茨城県に住む親友の孫の結婚祝いに贈ったのでした。

 彼がつくばいに花を添えた作品を描いてみようと思いついたのは、この『早春』が生まれる3年前のことだったようです。交通事故で怪我をして入院した水戸中学時代の友人に宛てて、1967年2月に清一が次のような絵手紙を書き送っていたことが分かったからです。

 






清水を湛えたつくばいに

季節の花を添えてみた

まことに見事な風情

何とか画にしたいと

いく度も試みたが

思うようにゆかぬ

今年は物にしたいものだ


         清
 



▲鈴木清一作『つくばいの水仙』

(1967年2月)
水彩・はがき、14.8cm×10.0cm
個人蔵(京都府京田辺市)

 


 はじめ清一は水仙をつくばいに添えて、何枚かの油彩画を描いてみたのですが、満足できるような結果が得られなかったのでしょう。つくばいの水仙は「まことに見事な風情」なのに ... と思いながら、この葉書を書いたものと思われます。

  いろいろと試してみているうちに、彼は水仙よりも赤い椿を描くことを思いついたのかも知れません。たしかに白い水仙よりは紅椿を配した方が画面が明るくなり、荒々しい肌をしたつくばいの暗い色とのコントラストが際立つことにもなります。
  こうして描かれたのが下に示した『つくばいの紅椿』なのでしょう。この絵は6号大の小さな板に描かれています。
 
ところで、今月の『早春』には紅椿に加えて水仙も添えられているのは、12号というキャンヴァスの大きさとのバランスを考えた結果なのかも知れません。
  清一自身が認めているように、何度も試みた後に最後に到達したのがこの『早春』で、親友の孫のために彼は自信をもってこの作品を贈ったものと考えられます。





▲鈴木清一作『つくばいの紅椿』
(1968-9年頃?)
油彩・板、31.6cm×40.8cm
個人蔵(神戸市須磨区)


 


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