2004年 9月号


このページでは、鈴木清一の作品を毎月一点づつ取り上げ、
作品にまつわる話題などととしていきたいと思います。

※今月から、バックナンバーが画面の最下段に移動しました。


今月は、『大阪・中之島公園』(1950年頃)をご紹介します。

▲ 鈴木清一作『大阪・中之島公園』(1950年頃)
コンテと水彩・紙、16.2×26.3cm
個人蔵(神戸市須磨区)


大阪の中之島は大川(旧淀川)に浮かぶ中州で、堂島川と土佐堀川に挟まれています。 今月の作品『大阪・中之島公園』は、土佐堀川に架かる淀屋橋付近からの風景を描いた水彩画です。

画面の手前を流れているのは土佐堀川で、ドームとペディメントを持つ建物は大阪府立中之島図書館、右奥に見える赤煉瓦造りの建物は中之島中央公会堂です。大阪を代表するこの見事な都市景観は、今日でも半世紀前とほとんど変わっていません。



▲ 淀屋橋南詰から中之島公園を望む
(2004年5月撮影)

 さて、清一は戦時中に大政翼賛会の活動に従事していたために、公職追放の処分を受けました。
 戦後、彼は永年続いていた中央・地方画壇との関係を断ち、私学で非常勤の美術教師をしたり、絵画同好会の講師をしていましたが、1948年頃から数年間、レートン色彩工業という絵具製造会社で働いていたことがありました。現在、この会社はもうありませんが、当時は大阪に本社と工場があり、清一は須磨の自宅から大阪まで通っていました。

 この『大阪・中之島公園』は、大阪駅から御堂筋を通って伏見町の本社まで歩いて通勤する途上、短時間で描き上げたものと思われます。

▲ 鈴木清一作『瀬本作次郎氏像』(1950年頃)
鉛筆・紙、39.3×27.2cm
個人蔵(神戸市須磨区)


 レートン色彩工業の社長・瀬本作次郎は兵庫県美術家聯盟(日米開戦後、兵庫県新美術聯盟となる)の賛助会員で、青年時代にイギリスで絵具の製造技術を学び、自らも聯盟展へ出品していたので 、清一とは親交がありました。

 レートンは戦前から油絵具や水彩絵具などのほかに、ペインテックスを製造・販売していました。ペインテックスというのは、布や皮やガラスなどの表面に絵や図柄を描くのに使われる手芸用絵具で、密着力が強く乾燥後も剥落しにくいので、ネクタイ、ハンカチ、テーブルセンター、ショール、帯、パラソル、ハンドバッグなどに手軽に応用できる特徴がありました。レートンで清一はペインテックス講習会の実技指導を担当していましたが、彼の能力がもっとも発揮できる仕事は図柄の制作でした。

 清一が瀬本の会社で働いていたのは戦後間もない1950年前後の時期で、染色よりもずっと手軽なペインテックスの講習会には、いつも手芸好きの女性が大勢集まりました。彼は全国各地で開かれる講習会の講師として出張する機会が多かったようです。

 

▲ 鈴木清一作『花模様のテーブルセンター』(1950年頃)
ペインテックス・綿布、30.5×39.5cm
個人蔵(神戸市北区)

 

▲ ペインテックス講習会会場(1950年頃)
受講生に手ほどきする清一が中央に写っている

 

▲ ペインテック実演会場(東京、1949年頃)
右端で実演をしているのが清一
貞明皇后(左手前)と香淳皇后(左奥)の姿が見える

 ところで、この『大阪・中之島公園』とほぼ同時期の作品と思われる大阪都心部のスケッチが数枚残っていますが、昔の景観が今日まで保たれているは中之島公園ぐらいです。それはそうでしょう。何しろもう50年以上も前のことです。大阪の街は1970年の万博を境にして、大きく変わり、現在も変わり続けているのです。

 

▲ 鈴木清一作『中之島風景』(1950年頃)
鉛筆・紙、18.9×27.3cm
個人蔵(神戸市須磨区)
大江橋から渡辺橋方面を望む
▲ 鈴木清一作『御堂筋風景』(1950年頃)
鉛筆・紙、18.9×27.3cm
個人蔵(神戸市須磨区)

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