2004年 10月号


このページでは、鈴木清一の作品を毎月一点づつ取り上げ、
作品にまつわる話題などととしていきたいと思います。

※今月までのバックナンバーは、ページの最下段をご覧下さい。


今月は、『ぶどうと西洋梨』(制作年不詳)をご紹介します。

▲ 鈴木清一作『ぶどうと西洋梨』(制作年不詳)
油彩・板、31.8×40.9cm、個人蔵(神戸市須磨区)


 ぶどうは清一が好んで描いたモチーフの一つでした。同じ房についた一粒一粒のぶどうも、よく見ると、みんな微妙に違って見えるのが興味深いのでしょう。また、マスカットやレディフィンガーのような淡緑色のものもあれば、巨峰やベリーAのような濃紫色のもの、甲州ぶどうやデラウェアのような薄紫色のものなど、さまざまな品種があるのもモチーフとして面白いのでしょう。

 この作品には、清一のお気に入りだった青い絵付け皿に載せた2種類のぶどうと西洋梨が描かれています。濃紫色のぶどうの傍に黄色い西洋梨を置いたことで、画面が引き締まって見えます。また、ぶどうの房に残された2枚の葉が画面に変化を与えています。

 ぶどうを描いた清一の作品は、油彩画だけでも40点近くが見つかっています。これらの中には、一房のぶどうだけを小皿に盛ったものもありますが、ほとんどの作品には、びわ、リンゴ、柿、レモン、水蜜桃、梨、ざくろなどが添えられています。

 1979年夏のある日、病の床に臥していた清一はアトリエに残されていた段ボール箱を持って来て欲しいと家人に頼みました。箱の中には3号から6号大の板や色紙に描いた彼の油彩画が4〜50点入っていましたが、どの作品にも制作年や署名が入っていませんでした。家人に助けられて上体を起こした彼は、これらの作品を1枚づつ手にとって吟味するように見つめ、気に入った作品には黒フェルトペンで「清一」と書き入れました。この『ぶどうと西洋梨』の画面左下に入っている署名はこの時のものです。3か月後に死を迎える彼が選んだ一枚だったのです。


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9月:『孔雀』


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