2005年 3月号


このページでは、鈴木清一の作品を毎月一点づつ取り上げ、
作品にまつわる話題などととしていきたいと思います。

※今月までのバックナンバーは、ページの最下段をご覧下さい。


今月は、戦前の神戸港を描いた『神戸メリケン波止場』(1936年頃)をご紹介します。

写真1 鈴木清一作『神戸メリケン波止場』(1936年頃)
水彩・紙、25.0x31.5cm、個人蔵(神戸市須磨区)
 

 この水彩画に描かれている風景は、昔の神戸の街を知る人にはとても懐かしいものでしょう。霞がかかったような六甲の山並を背景に、左から大阪商船神戸支店ビル、オリエンタルホテル、水上警察署の建物などが海岸通に沿って整然と並び、手前には艀で混雑するメリケン波止場の賑わいが活き活きと描かれています。
  右手前には荷物を積んだ小さな伝馬船が描かれていて、古き良き時代にタイムスリップしたような感覚にとらわれます。いかにも港町・神戸らしいこの景観は、昔から絵葉書にもよく登場しています。


 
←写真3 メリケン波止場の標識
(2005年2月24日撮影)

昔なつかしメリケン桟橋
ころは明治のはじめ
ここに小さな突堤があり
その先に浮き桟橋があった
近くにアメリカ領事館があったので
人びとはアメリカ桟橋をなまって
メリケン桟橋と呼ぶようになった
のち、神戸港は出船入船が繁くなり
世界的に発展したので
その玄関口として
長い立派な突堤を築いた
世人はここを神戸の名所の一つとして
メリケン波止場と呼んで親しんでいる

須崎喜夫 小野米吉


 戦後も1960年代に入ると、高架の高速道路が海岸通の南側に建設され、多くの高層ビルが次々と建てられたために、メリケン波止場の景観は大きく変わりました。
 1968年に久しぶりに海岸通を歩いた清一は、その非常な変貌ぶりに驚き、友人にその様子を書き送っています(写真4)。なお、当時、神戸商工会議所は海岸通と京橋が交差する南東角にありましたが、現在ではポートアイランドに移っています。

 
←写真4 鈴木清一作『海岸通』(1968年)
水彩・葉書、14.8x10.0cm
個人蔵(京都府長岡京市)

最近、神戸市街の変貌は大変な
ものです。このスケッチもその一例。
昨日海岸通を歩いてみた。商工会議所の
辺から西方を見ると、神戸港から海を
またいで一直線に高架高速自働車道路。
目下、兵庫柳原辺まで開通したとか

 しかし、今日の変貌ぶりに至っては、清一が驚いたよりも遥かに大変なものがあります。中央の塔屋に特徴があった水上警察署の堂々たる建物は新しいビルに立て替えられ、阪神高速道路の南側には高架の浜手バイパスが建設されました。さらに1995年の阪神淡路大震災がこれに追い打ちをかけました。
  こうして、メリケン波止場からの景観が一変してしまったのです(写真4)。

写真5 現在のメリケン波止場(2005年2月24日撮影)

画面を横切る3本の高架道路は浜手バイパス(上2本)と
阪神高速道路3号神戸線、画面中央の半円形の塔屋がある建物は
水上警察署、その右側が労働基準監督署と神戸第2地方合同庁舎。
高層ビルが増えたために六甲の山並が殆ど見えなくなった。

 水上警察署の建物に遮られて、メリケン波止場からは見えなくなった大阪商船神戸支店ビル(現在の商船三井ビル)は、現在も健在なのは嬉しい限りです(写真5)。
  アメリカ・ルネッサンス様式のこのビルは、渡辺節の設計で1922(大正11)年に竣工、テラコッタのタイルで仕上げられた外壁の美しさは格別なものがあります

写真6 商船三井ビル(2005年2月24日撮影)

海岸通と明石町が交差する北東角に建つこのビルは
水上警察署などの 官庁舎の陰に隠れて、メリケン波止場からは
見えなくなったが、大震災後も生き残って旧居留地内では
貴重な戦前派ビルの一つとなった。
右隣のオリエンタルホテルは、大震災で全壊し姿を消した。

 

 

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