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▲A 鈴木清一作『明石城址』(1960年代後半?) 油彩・色紙、27.3x24.3cm、個人蔵(横浜市) |
この作品は色紙に油絵具で描かれています。太い筆で一気に描き上げたものらしく、荒々しいまでに大胆なタッチと厚塗りのマチエールが、ごく小さい画面の中に力強いエネルギーを与えています。手前の樹木は樟なのでしょう。淡い橙色を帯びた若葉が黄緑色の新緑へと変わりつつあるようで、季節は5月はじめのように思われます。木立の向こうに二層だけ姿を見せている城櫓の白い壁が、晴れ渡った青空とまぶしいような若葉の緑に映えています。
ここに描かれている明石城と明石公園は、すでに『若葉の明石公園』(2005年5月号)でもご紹介したように、木曜会の郊外スケッチで清一がよく出かけた場所でした。明石へは神戸の都心から電車で15分足らずで行くことができます。明石駅のプラットホームに立つと、南側には大小の船舶が頻繁に行き交う明石海峡を隔てて、淡路島が間近かに見え、駅の北側には緑に包まれた明石城の石垣と二つの櫓が見えます。
明石城は1619年に築城されました。本丸には天守台が築かれましたが、天守閣は建設されず、本丸4隅にあった櫓のうち南側の二つの櫓が現存し、いずれも国の重要文化財に指定されています。巽櫓(たつみやぐら)と坤櫓(ひつじさるやぐら)で、清一が描いたのは南東隅の巽櫓です。現在、明石公園内の藤見池の付近から巽櫓を見上げると、周囲の樹木が大きくなってはいますが、清一が描いた当時の光景をほぼ正確に再現することができます(B)。
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| ▲B 明石公園内の藤見池の付近から巽櫓を望む(2006年4月撮影) |
油彩画『明石城址』(A)と同じ構図の水彩スケッチが見つかっています(C)。
木曜会の郊外スケッチで、日曜画家たちに交じって清一が気軽に描いたものでしょう。彼はこのスケッチを基に、アトリエで油絵具を使ってこの色紙を描いたものと思われます。
彼は油彩画にも水彩スケッチにも日付を入れていないので、正確な制作年は分かりませんが、1960年代後半の作品であろうと思われます。彼が友人に宛てた1967年5月2日付の葉書(D)が、一つの手がかりを与えてくれます。
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「青葉の候となりました。青葉の波に浮んだ明石城の天守閣[ママ]は美しい風景です」という添え書きのあるこの葉書絵が、水彩スケッチ(C)を基に描かれたと考えるのは自然でしょう。そうすると、水彩スケッチは1967年5月に描かれたか、あるいはそれ以前に描かれていたことになります。
ただし、油彩画(A)の方は葉書よりも先だったのか、後だったのかを明らかにすることはできませんが ...