
今月は、清一が1967年ごろに描き、生涯の親友に贈った静物画の小品をご紹介いたします。
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| ▲鈴木清一作『静物』(1967年ごろ) 油彩・板、31.8x40.9cm、個人蔵(水戸市) |
この作品には、ゆったりとした風格のようなものを感じます。一輪挿しと茶碗を古布の上に並べただけの素朴なモチーフを、青と白と茶色の絵具だけで描いたものですが、平凡な中にも不思議な魅力を備えています。花瓶と茶碗に描かれた文様とバックの藍色が、布地の茶色と見事なコントラストをなしています。藍色は清一が大好きな色でした。この絵を贈られた彼の友人は「… 甚だ傑作だ。わき目も振らずに描いたことと思う。どうもありがとう」と、清一に礼状を書き送っています。
この絵を描いた当時の清一は72歳、2年前には妻・八千代が上顎がんの手術を受けるという大きな出来事がありましたが、幸い術後の健康状態は安定していました。ようやく落ち着きを取り戻した彼は、ちょっとした暇を見つけてアトリエに籠ると、窓から見える外の景色や、庭に咲いた花をお気に入りの花瓶とともに描くなど、日常の雑事を忘れて静かなひとときを楽しんでいるようでした。
ここに描かれている一輪挿しと茶碗は、わたしが子どもころから父のアトリエに置いてあったのを覚えています。おそらく清一がどこかの古道具屋で見つけてきたものでしょう。彼はこの花瓶と茶碗が気に入っていたらしく、彼の静物画にしばしば登場するものです。
ずいぶん昔のことになりますが、わたしはこの花瓶を手品の道具に使って遊んだことを覚えています。左手に花瓶を持ち、右手で竹ひごを瓶口に差し込んで持ち上げても、花瓶は持ち上がりませんが、竹ひごを差し込んだまま花瓶を上下逆さまにして呪文を唱えてから竹ひごを持ち上げると、今度は花瓶が竹ひごと一緒に持ち上がるというのが見せ場でした。これは夜店で覚えた子ども向けの手品で、仕掛けは花瓶の中に密かに入れた小豆大の紙玉にありました。今でもこの花瓶と茶碗は私の手元に残っています。
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