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2007年 9月号


 


鈴木清一作『森』(1975年ごろ)
油彩・カンヴァス、60.6x50.0cm、筆者蔵





 数ある清一の作品の中でも、これは異色の作品と言わなければなりません。

 まず何よりも、画面全体が非常に暗い色彩によって支配されていることで、明るい色彩に溢れた彼の作品を見慣れた目には、一瞬奇異に感じることでしょう。よく見ると、画面の上部には木の間越しに薄いピンク色の空が覗いており、その下には遠景の青い山並みも見えています。いずれも決して明るい色ではなく、ややくすんだ色に塗られているのですが、画面全体の暗さとの見事なコントラストによって、実際よりもかなり明るく感じられます。上空から差し込む淡い光に、足元を流れる小さなせせらぎが微かに輝いています。さらに目を凝らすと、画面左手と右端に描かれた太い樹木が松だったことに気付きます。昼なお暗い森の中へと静かに分け入って、幽玄の世界を彷徨い歩いているような感覚に囚われる不思議な魅力を持つ、清一独特の力強さを感じさせる森の風景です。
 この作品のもう一つの特徴は、絵具が非常に厚く塗られていることです。厚塗りという点では、すでに「今月の一枚」でご紹介した『小菊』(2003年1月号) と双璧をなしています。1970年代後半の彼は、独りアトリエに籠って試行錯誤を繰り返すうちに、このような厚塗りの作品ができあがったのです。いずれも、最晩年の彼が苦心惨憺の末に生み出した傑作と言えるでしょう。 

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2007年

 

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7月:『静物』
6月:『新楼の家』
5月:『冬の海』
4月:『初秋の丘』
3月:『蘭』
2月:『横臥する裸婦』
1月:『耕三生後八か月』

 
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11月:『秋果』
10月:『小菊』
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8月:『静岡風景』
7月:『海岸の風景』
6月出版のご案内
    『孤高の画家・鈴木清一の作品と生涯』
5月:『明石城址』
4月:『青い花瓶の水仙』
3月:『戦前の旧居留地風景』
2月:『室津の梅』
1月:『雪の月見山』

12月:『神戸山手風景』
11月:『秋の渓流』
10月:『天王山農場本館』
9月:『芙蓉』
8月:『ぶどうと桃』
7月:『街頭スケッチ』
6月:『六甲風景』
5月:『若葉の明石公園』
4月:『神戸山手風景』
3月:『神戸メリケン波止場』
2月:『水戸県庁前堤の並木』

1月:『青いリボンの少女』
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12月:『山本五十六元帥の生家』 
11月:『月見山晩秋』
10月:『ぶどうと西洋梨』

9月:『中之島公園』
8月:『山百合』
7月:『丹頂鶴』
 
6月:『月見山の家の 庭』
5月:『舞子の風景』

4月:『鬼塚貫一氏 像』
3月:『倉敷の家』

2月:『早春』
1月:『自画像』
12月:『少女』 
11月:『秋深まる』 
10月:『染付け皿と秋果』
9月:『窓からの風 景』 
8月:『石廊岬』
7月:『婦人像』
6月:『水戸弘道館』 
5月:『布引の新緑』
4月:『山ざくら』
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1月:『小菊』
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11月: 『筑波山』 
10月: 『篠原本町の庭』   
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8月:『九歳の八千代』  
7月:『会下山風景』
6月:『舞子の松』
5月:『赤い本』

4月:『菊池辰重氏像』
3月:『代々木風景』
2月:『春のうた』
1月:『雲と牛』
12月:『天王山農場』
11月:『初秋』

10月:『月見山風景』
9月:『孔雀』

 


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