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2007年 12月号


今年最後の「今月の一枚」は、水彩画『晩秋の御堂筋』(1950年ごろ) です。


鈴木清一作『晩秋の御堂筋』(1950年ごろ)
水彩・紙、35.8x25.8cm
個人蔵(神奈川県厚木市)





  晩秋の柔らかい陽光を背後から浴びて、街路樹の銀杏が目の眩むような黄金色に輝いています。分離帯の常緑樹の植え込みの周囲も、黄金色の銀杏の落ち葉で覆われています。薄青色に描かれた沿道のビル影が、銀杏並木をいっそう美しく見せています。
 清一はこの水彩画に何も記してはいませんが、11月中下旬の大阪・御堂筋を描いたスケッチであることは間違いありません。
御堂筋は大阪市北区梅田(キタ)から中央区難波(ミナミ)までの約4kmを南北に走る幹線道路で、沿道に北御堂(西本願寺津村別院)と南御堂(東本願寺難波別院)があることからこの名があります。

 
御堂筋が完成したのは、今からちょうど70年前の1937(昭和12)年のことでした。それまでは、幅6メートル、長さ1.3キロメートルの貧相な道に過ぎなかった淀屋橋筋を、一挙に幅44メートル、緩急車線を分離した6車線の近代的な大通りに改造したのは第7代大阪市長の関一(せきはじめ)でした。道路の下に地下鉄(御堂筋線)を通し、電線を地下に埋設するなど、当時としては画期的な都市計画事業で、大阪市民から「市長は大阪のど真ん中に飛行場を作るのか」と揶揄されたという話が残っています。
 以来、沿線には大阪市役所、日本銀行大阪支店をはじめ、大企業のビルが軒を連ねる大阪随一のビジネス街へと発展し、大都市の品格と景観を維持してきました。完成当初は交通量も疎らだった御堂筋も、1960年代の高度経済成長期から交通量が急増し始め、ついに1970年には南行き一方通行になり、今日に至っています。
 さて、画面手前の路面に落とした銀杏の影の長さと向きから、この作品は午後3時ごろに描かれたものと思われます。ところが、画面の奥に2〜3台の車と数人の歩行者が描かれているほかは、この大通りは不思議なほど静まり返っています。それもそのはず、このスケッチは今から60年近くも前に描かれたものなのです。

 清一は1947(昭和22)年ごろから数年間、大阪の絵具メーカーで仕事をしていたことがあったことから、彼は当時の大阪の街を数枚のスケッチに残しています(2004年9月号の
『大阪・中之島公園』をご参照下さい)。この『晩秋の御堂筋』もその中の一枚です。おそらく彼は、御堂筋東側の伏見町3丁目にあった勤務先のビルの窓から、逆光に映える美しい銀杏並木を見て、創作意欲を刺激されたのでしょう。

 

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