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2008年 12月号


今月は1933年に制作された「赤松の丘」を取り上げることにいたします。

今までにも「今月の一枚」のページでは、『舞子の松』(2002年6月号)、『冬の赤松』(2007年8月号)、『武庫川堤』(2008年5月号) など、清一が好んで描いた松林の作品をたびたびご紹介してきました。いずれの作品も清一独特の穏やかな画風で描かれているのですが、今月の「赤松の丘」では、他の作品には見られないような極めて大胆な省略と躍動的な筆遣いに眼を奪われます。

一般に作者の画風というものは年月の経過とともに変化するものですが、清一の長年にわたる作品群を鳥瞰しても、この「赤松の丘」に見られるような荒々しいばかりの作品は、他にあまり例がありません。なぜ彼はこのような作品を描いたのでしょう。


▲鈴木清一作 『赤松の丘』(1933年)、油彩・板、23.7x32.9cm、筆者蔵

この作品が描かれた1933年(昭和8年)という年は、清一が三菱重工業神戸造船所の洋画同好会・木曜会の講師を引受けた年にあたります。毎週木曜日の終業後、20数人の木曜会の会員たちは造船所内の一室に集まり、清一の指導を受けながら静物画や人物画を描いたり、休日には神戸の近郊へ出掛けてスケッチを楽しんでいました。さらに、彼らは毎年春と秋に作品展を開いて、日ごろの練習の成果を会員以外の人たちにも観てもらう機会を設けていました。

1933年11月に開かれた第3回木曜会作品展覧会の目録を見ると、25人の会員の作品49点に混じって、清一も2点の作品を賛助出品しています。そして、その中の1点がこの「赤松の丘」だったのです。写生をした場所は分かりませんが、清一が木曜会の会員たちと休日に出掛けた神戸の郊外風景なのでしょう。自由奔放な彼のこの作品は、忠実な写実に没入し勝ちな会員に「これぐらい自由に描いたら面白い絵ができるんじゃないのかな」と語りかけるためのお手本だったのではないでしょうか。そんなことを考えながら、75年前に描かれたこの松林の絵を観るのも面白いと思います。


▲ 第3回木曜会作品展目録の表紙 (菊のカット絵は清一作)

 


第3回木曜会作品展会場での記念写真(1933年11月26日):前列左から山口欣二、丸山芳夫、田村初久、鈴木清一講師、服部紀雄、神田忠雄、林得三、後列左から:井上猛、七尾基、中間正己、槌谷真作、吉村誠一郎、鬼塚貫一、大島秀夫、土岐正義、沢田勝見、竹村元春、古久保立一、三谷繁太郎、小塚於兎丸

 

 

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