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2009 年2月号 
第9巻 第2号 (通巻第90号)
「画室の裸女」


明るい陽光を全身に受けた一人の裸婦が、重厚な造りの ソファーに座っています。ソファーに掛かったカーテンと同じ青い布が裸婦の白い肌を引き立てていま す。右手を軽く顎に当てて科を作っている彼女は、光が差込む方向に眼を向けていますが、カーテンの隙間から見える窓の外の景色を眺めているのでしょう。足 元の脚置き台の上にはスケッチブックのようなものが置かれ、背後の壁には小さな人物画が掛っていて、いかにも画家のアトリエといった風情です。

今月ご紹介しているのは、1928(昭和3)年の第9回帝 国美術院展覧会(帝展)に入選した「画室の裸女」という作品です。1921(大正10)年の第3回帝展に『初 秋の丘』(2007年4月号)が初入選して以来、清一にとっては6回目の帝展入選作品です。原画は終戦直前の水戸の空襲で実家ととも に焼失したらしく、この写真は絵葉書から複写したものです。おそらく80号ないし100号ぐらいの大きさの作品だったのでしょう。

画室の裸女

▲鈴木清一作「画室の裸女」(1928年), 油彩・カンヴァス, 焼失 ?

この作品について、中山巍による短い批評が『中央美術』 (1928年11月号)に掲載されています。

・・・この人も永年の勉強と才筆の結果、渋滞なき描きぶりです。重い 描法は氏の以前からの持ち前で、この形式の他の裸体画よりも見ごたえのある所以です。

1924(大正13)年から1928(昭和3)年までの帝 展に、清一は4枚の裸婦像を続けざまに出品しており、すでにこのページでご紹介した「浴 女」(2008年2月号)はそ の中の1枚です。帝展ばかりでなく、彼は1926(大正15)年に開かれた第1回聖徳太子奉賛美術展にも、同じ画題の「画室の裸女」(2008年8月号) な ど、2点の裸婦像を出品しています。それほどまでに当時の清一は裸婦像の大作に挑戦していたのです。しかし、いずれの原画も残っていないのが残念です。

1919 (大正8)年に東 京美術学校(現在の東京芸大美術学部)西洋画科を卒業後、同校の研究科で研鑽を積んでいた当時の彼は、かつて菱田春草が住んでいた東京・代々木山谷160 番地(現在の渋谷区代々木3丁目)にアトリエを構えていました。これら一連の裸婦像は、おそらくこの代々木のアトリエで描かれたものなのでしょう。

 

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