monthly_title.gif

2009 年7月号 
第9巻 第7号 (通巻第95号)
舞 子の松林




▲図1.鈴木清一作「舞子 の松林」 (1970年代 ?), 油彩・カンヴァス, 45.5x53.0cm, 筆者蔵  

舞子公園の松林は清一が繰り返し描いたモチーフで、彼の最後の作品となった『舞 子の松』(2002 年6月号)をはじめ、多くの作品が残っています。ここにご紹介する「舞子公園の松林」(図1) は1960年代に清一が指導していた絵画教室の会員に譲った作品で、最近になって所蔵者の遺族から筆者に返還されたものです。

舞 子公園は1900(明治33)年に兵庫県で最初に県立公園に指定された面積約5haの松林を主体とした公園で、万葉の昔から詩歌に詠まれた白砂青松の景勝 地・舞子浜に接しています。画面に描かれているのは、舞子公園内から南西方向を望んだ風景で、まだ細いクロマツの若木の間から見えるのは、明石海峡と淡路 島です。松林の先に水平に描かれた防潮堤の手前には国道2号線が走っています。曾ては東の須磨から西の明石までの浜辺は「松原づたい」と呼ばれていたそう ですが、その後、松林は伐採され砂浜は削り取られて、現在では舞子公園の松林がかろうじて昔の面影を残しています。

舞子公 園の松林は幾多の困難な事態に遭遇してきました。曾ては巨大な老松と壮年松が群生していたのですが、終戦直後に付近の建物がアメリカ占領軍に接収され、軍 用車両の公園内への乗り入れのために多くの松が伐採されました。また、1955年以降には台風の上陸が相次いだうえに、シロアリの発生によって老松は大き な被害を受けました。さらに塩害や国道2号線を通過する車両の排気ガスによる被害も重なりました。1967(昭和42)年に清一は「天下の景勝舞子も今日 では老朽の松も次々と枯れ、昔の面影なし」と友人に書いて嘆いています。

このような事態に対処するために、松林の保護対策 のための調査研究が進められ、防風防潮林の造成、病害虫の駆除、土壌改良、植樹、施肥などが講じられました。こうした一連の努力が実を結び、最初はまばら だった園内の松も次第に松林の態をなすようになっていきました。清一が「舞子公園の松林」を描いたのは、おそらくこの時期 --- 1970年代のことだったように思われます。

清一はその後の公園周辺の変化を知らずに1979(昭和54)年に世を去りま したが、明石海峡大橋の建設によって舞子公園の景観は大きく変わりました。技術の粋を集めて建設された巨大吊り橋が空間を切り裂くように架けられているの が最大の変化ですが、公園の松林の南側に盛土部分ができたために、園内からは明石海峡の海面と淡路島が見通せなくなり、清一の「舞子公園の松林」に描かれ た風景はもう見ることができなくなってしまったのです。

※ 今月までのバックナンバーは、ページの最下段をご覧下さ い。


戻る  トッ プページへ   このページのトップへ  バッ クナンバー


バックナンバー


2009年
6月:『筍』
5 月:『雉(きじ)』
4 月:『橋本邦助氏像』
3 月:『海が見える風景』
2月:『画室の裸女』
1月:『緑の中の牛』
 

2008年

2007年

12 月:『赤松の丘』
11月:『紅椿』
10月:『りんどう』
9月:『七歳の秋』
8月:『画室の裸女』
7月:『洞爺湖』
6月:『本栖湖』
5月:『武庫川堤』
4月:『舞子風景』
3月:『風景(1)』
2月:『浴女』
1月:『早春』

12月:『晩秋の御堂筋』
11月:『柿とざくろ』
10月:『静物』
9月:『森』
8月:『冬の赤松』
7月:『静物』
6月:『新楼の家』
5月:『冬の海』
4月:『初秋の丘』
3月:『蘭』
2月:『横臥する裸婦』
1月:『耕三生後八か月』
2006年 2005年

12 月:『水戸桜山の秋』
11月:『秋果』
10月:『小菊』
9月:『小屋』
8月:『静岡風景』
7月:『海岸の風景』
6月出版のご案内
    『孤高の画家・鈴木清一の作品と生涯』
5月:『明石城址』
4月:『青い花瓶の水仙』
3月:『戦前の旧居留地風景』
2月:『室津の梅』
1月:『雪の月見山』

12月:『神戸山手風景』
11月:『秋の渓流』
10月:『天王山農場本館』
9月:『芙蓉』
8月:『ぶどうと桃』
7月:『街頭スケッチ』
6月:『六甲風景』
5月:『若葉の明石公園』
4月:『神戸山手風景』
3月:『神戸メリケン波止場』
2月:『水戸県庁前堤の並木』

1月:『青いリボンの少女』
2004年 2003年
12月:『山本五十六元帥の生家』 
11月:『月見山晩秋』
10月:『ぶどうと西洋梨』

9月:『中之島公園』
8月:『山百合』
7月:『丹頂鶴』
 
6月:『月見山の家の庭』
5月:『舞子の風景』

4月:『鬼塚貫一氏像』
3月:『倉敷の家』

2月:『早春』
1月:『自画像』
12月:『少女』 
11月:『秋深まる』 
10月:『染付け皿と秋果』
9月:『窓からの風景』 
8月:『石廊岬』
7月:『婦人像』
6月:『水戸弘道館』 
5月:『布引の新緑』
4月:『山ざくら』
3月:『水仙』

2月:『早春の六甲』
1月:『小菊』
2002 年  2001 年
12月:『根室原野の鶴』
11月: 『筑波山』 
10月: 『篠原本町の庭』   
9月: 『八千代像』  
8月:『九歳の八千代』  
7月:『会下山風景』
6月:『舞子の松』
5月:『赤い本』

4月:『菊池辰重氏像』
3月:『代々木風景』
2月:『春のうた』
1月:『雲と牛』
12月:『天王山農場』
11月:『初秋』

10月:『月見山風景』
9月:『孔雀』

 

  戻る  トッ プページへ   このページのトップへ  バッ クナンバーのトップへ