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2010年6月号 
第10巻 第6号 (通巻第106号)

赤絵の扁壷 (1967年)



鈴木清一作:赤絵の扁壷

▲図1. 鈴木清一作「赤絵の扁壷」(1967年)
水彩・はがき、14.8x10.0cm、個人蔵(京田辺市)


1967年1月に清一は、水戸中学(現・水戸第一高等学校)時代の親友が交通事故で入院したという知らせを受けました。さっそく病院に見舞った彼は、その日から毎日のようにはがき絵の見舞い状を送り、一日も早い回復を祈ってこの友人を励まし続けました。季節の花だより、懐かしい水戸の風景や 一緒に訪れた旅先の風景、身の回りの品々など、清一から届くはがき絵の便りを友人は病院のベッドで心待ちにしていたのでしょう。2年余りの間に書き送った180枚を超えるはがき絵がご遺族の手元に残されていました。今月ご紹介するのはその中の一枚です。

はがきに描かれているのは赤絵の扁壷で、白磁の表面に鮮やかな朱と緑で絵付けされており「三四年前、山手の古道具屋で見つけた赤絵の扁壷、高さ五寸ほどのもの。僕の掘り出しものの中では秀逸の品。江戸時代のもの。近いうちに御見舞いにゆく」と添え書きされています。

わたしが子供の頃からこの壷が清一のアトリエにあったことを覚えていますから、「三四年前」とあるのは「三十四年前」と考えなければならず、このはがき絵が描かれた1967年から起算すると、この壷を入手したのは1933(昭和8)年であったことが分かります。それにしても「三十年以上前」とか「三十数年前」とはせずに「三十四年前」と明記しているのですから、彼にとってこの壷はよほど印象に残る大きな掘り出し物だったのでしょう。この壷が彼の静物画に非常に頻繁に登場する事実から考えても、清一の大変なお気に入りだったことは間違いありません。

清一の遺品の中にあったこの壷は、現在もわたしの手元に残っています。手に取って調べてみると、壷の高台部分に「穎川造」の文字が記されており、京焼・清水焼の歴史に大きな変革をもたらした京都の陶工・奥田穎川(おくだえいせん、1753〜1811)の作であることが分かります。彼は九州でしか作られていなかった磁器を京都ではじめて作った陶工として有名な人物です。清一もこんな逸品を見つけてびっくりしたことでしょう。

赤絵の扁壷の両面  赤絵の扁壷の両面

▲図2および図3. 赤絵の扁壷の両面

 赤絵の扁壷の両面

▲図4. 高台に記された「穎川造」の文字

 

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