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2011年1月号
第11巻 第1号 (通巻第113号)

庭にて (1932年)




あけましておめでとうございます。いつも「今月の一枚」をご高覧いただき、まことにありがとうございます。「今月の一枚」は開設以来11年目を迎え、本号で通巻113号を数えるまでになりました。これまで続けてこられたのも、温かいご意見やご感想をお寄せ下さる皆様方のご支援の賜物であり、改めて 厚くお礼を申し上げます。どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

さて、今月ご紹介するのは1932(昭和7)年の第13回帝国美術展覧会(帝展)に出品された「庭にて」という作品です。原画が行方不明になっているために、展覧会図録に掲載されているモノクロ写真のコピーでしかご覧いただけないのが残念です。

庭にて

▲鈴木清一作「庭にて」(1932年)
油彩・カンヴァス、115x115cm(推定)、原画は行方不明

二人の少女が日向に椅子を出して寛いでいます。右側のおかっぱ頭をした幼い顔の少女はスケッチブックのようなものを抱えてこちらを見つめています。年齢はおそらく10歳ぐらいでしょう。左側で脚を組んだ少女は少し大人びて見えますが、14〜15歳ぐらいに思われます。二人の少女の間に耳をピンと立てた犬が長い舌を出してうずくまっています。背景には庭木が生い茂り、足下には百日草らしい花が咲いています。のどかな休日の午後といった風情を感じさせる作品です。もしもこの作品の原画を見ることができたとしたら、少女たちの服の色が背景の緑に鮮やかに映えて、明るく楽しい雰囲気を感じることができることでしょう。

ところで、ここに描かれている2人の少女がどこの誰なのか、場所はどこなのかを突き止めたい思って、心当たりを調べてみたのですが、残念ながら分かりませんでした。ひとつだけ気がついたことは、少女の足下にうずくまっている犬が『今月の一枚』(2009年12月号)でご紹介した『黒い犬』に間違いなさそうだということでした。そういえば「黒い犬」も「庭にて」と同じ1932年に制作されたもので、清一は「庭にて」の中に描くために「黒い犬」を習作したのかも知れません。彼が1936年の昭和11年文部省美術展覧会(文展)に招待出品した『初秋』(2001年11月号)にも、1匹の犬が描き込んでいます。わたしは両親や兄姉から聞いたことはないのですが、ことによるとわたしが生まれる前に自宅に犬を飼っていたことがあったのかも知れません。

 

黒い犬

▲ 鈴木清一作「黒い犬」(1932年)
油彩・板、20.5x27.0cm、個人蔵 (立川市)

ここで、ご参考までに清一の官展出品歴を整理しておくことにいたします。彼は1921年の第3回帝展から1940年の紀元2600年奉祝展まで、1927年を除いて毎年官展に出品していました。このうち第5回帝展(1924年)に出品した「浴女」から第9回帝展(1928年)に出品した「画室の裸女」までは、すべて裸婦を描いたものでした。しかし、第10回帝展(1929年)以降は15回帝展(1934年)の「いでゆ」を除いて裸婦を描いていないのです。神戸に逗留中の清一が水戸の吉野八千代に宛てた1930年5月1日付の手紙には「画室とモデルが欲しい。しみじみ欲しい。バラの花弁のような美しい女性の皮膚を描きたい …」と書いていることを考えると、彼が裸婦を描かなくなったことは謎めいています。

開催年
官展名
作品名
『今月の一枚』掲載号
1921年
第3回帝展
2007年4月号
1922年
第4回帝展
2002年5月号
平和記念東京博覧会展
2008年1月号
1923年
帝展開催なし
---
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1924年
第5回帝展
2008年2月号
1925年
第6回帝展
『首夏』
1926年
第7回帝展
『女』
第1回聖徳太子奉賛展
2008年8月号
『花と裸女』
1926年
台湾滞在中で出品せず
---
---
1928年
第9回帝展
2009年2月号
1929年
第10回帝展
『草の上』
1930年
第11回帝展
2001年9月号
1931年
第12回帝展
『風景』
1932年
第13回帝展
『庭にて』
2011年1月号
1933年
第14回帝展
『みなかみの春』
1934年
第15回帝展
『いでゆ』
1935年
帝展開催なし
---
---
1936年
昭和11年文展(招待出品)
2001年11月号
1937年
第1回新文展(招待出品)
『有馬の秋』
1938年
第2回新文展(招待出品)
『七歳の秋』
2008年9月号
1939年
第3回新文展(招待出品)
2009年9月号
1940年
紀元2600年奉祝展(招待出品)
2002年1月号

 

  

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