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2011年2月号
第11巻 第2号 (通巻第114号)

蕗の薹 (1947年頃)




今月ご紹介するのは、清一が戦後間もない1947年頃に描いた「蕗の薹」です。蕗の薹(フキノトウ)はフキの花の蕾です。雪が解けるのも待ち切れずに、蕗の根茎から健気に芽を出す蕗の薹は早春の使者です。

蕗の薹は独特の香りと苦味を持つ山菜として、古くから「春の皿には苦味を盛れ」と重用されています。冬の間に溜まった脂肪や毒素を体外へ出し、味覚を刺激して気分を引き締める効果があるというわけです。清一は細かく刻んだ蕗の薹を入れた朝食の味噌汁が大好きでした。彼は蕗の薹の「効能書き」を重視していたというよりは、香りと仄かな苦みを楽しんでいたと言うべきでしょう。

蕗の薹

▲図1. 鈴木清一作「蕗の薹」(1947年頃)
油彩・板、27.0x22.0cm、個人蔵(茨城県)

この小品が描かれた1947年頃から数年間、清一はレートン色彩工業という大阪の絵具製造会社で、手芸用絵具ペインテックスの普及拡大を図る仕事に携わっていました。当時は刺繍糸などの手芸材料が手に入りにくく、ペインテックスが染色よりもはるかに手軽であることから、ペインテックス講習会にはいつも多くの手芸好きの若い女性が集まりました。清一は講習会の講師として郷里・茨城県へも出掛けたことがあったようです。今月ご紹介した「蕗の薹」(図1) は、郷里の親友宅を久しぶりに訪ねた際に描かれたものです。

また、清一は交通事故で入院中の別の親友のためにも、蕗の薹をはがき絵に描いて送っています(図2および図3)。「細かくきざんで味噌汁にうかした風味、生きているのがうれしくなる朝の食卓・・・」とは、いかにも自然派の清一らしい感覚です。
 
ふきのとう
ふきのとう

▲図2. 鈴木清一作「ふきのとう」(1967年2月)
水彩・はがき、10.0x13.8cm、個人蔵(京都府)

細かくきざんで味噌汁にうかした風味、
生きているのがうれしくなる朝の食卓。
今朝隣家の庭に二つ三つにょっきり出ていた。
いよいよ春だ。御大事に御大切に。


▲図3. 鈴木清一作「ふきのとう」(1967年3月)
水彩・はがき、10.0x13.8cm、個人蔵(京都府)

散歩の道すがらふきのとうを見つけて写生した。
こんなに伸びてしまっていた。地面にへたばり
ついていた雑草の葉も伸びて来た。もう三月だ
ものね。君も早く快くなってくれ。祈っている。

 

  

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