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2011年6月号
第11巻 第5号 (通巻第117号)

白い草花 (1960年代)




先月のこのページでは、清一が創作した図案のモチーフ『童子嬉戯』シリーズから「笛を吹く童子」をご紹介しました。清一から「笛を吹く童子」を贈られたOさんに伺った話によると、Oさんはこの愛らしい作品をとても気に入られ、このつぎには裸婦像をぜひお願いしたいと清一に所望されたのだそうです。清一がOさんの求めに応じて描いたのが今月の「白い草花」(図1) です。なお、この作品は4年前にOさんのご遺族から筆者に返還されました。

鈴木清一作:『白い草花』

▲図1. 鈴木清一作「白い草花」(1960年代)
油彩・カンヴァス、53.0X45.5cm、筆者蔵


これよりはるか以前の1920年代、代々木時代の清一は裸婦像を毎年帝展などの官展に出品していました。1924年の帝展に出品した『浴女』(2008年2月号)はその代表的なものです。しかし、「いでゆ」(1934年帝展出品) を最後に、彼の裸婦像の連作は終わりを告げ、戦後もわたしの知る限り裸婦を描くことはなかったのです。この「白い草花」を唯一の例外として・・・

ここで40余年の歳月を隔てた二つの作品を比べてみると、「浴女」(図2) の裸婦はアカデミックな技法でリアルに描かれているのに対して、「白い草花」の裸婦は太い腕や脚に見るように、幾分デフォルメした技法を採ることによって、彼は女性の裸体をなるべくユーモラスに見せる工夫をしたのではないでしょうか。また、「浴女」では泉の畔の自然な風景が背景に描かれているのに対して、「白い草花」に描かれている背景には、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような非常に幻想的な雰囲気が感じられます。とくに青い空に浮かんだピンクとオレンジの雲が効果的です。さらに言えば、草むらに咲く白い草花を一輪手折って愛でているいる女性の姿は、清一の十八番である『童子嬉戯』に相通じるものがあります。彼は『童子嬉戯』の童子を成人女性に置き換えることを試みたのかも知れません。

筆者がこう考えるに至った手掛かりとなったのが、彼のスケッチブックの中から発見された「裸婦の図案」 (図3) です。今までのところこの1枚しか見つかっていませんが、『童子嬉戯』とは違う成人女性を図案化したものであることは明らかです。

みなさんはどうお感じになるでしょうか。

鈴木清一作 『浴女』

▲図2. 鈴木清一作『浴女』(1924年) 油彩・カンヴァス
第5回帝国美術院美術展覧会出品、焼失

鈴木清一作「裸婦の図案」

▲図3. 鈴木清一作『裸婦の図案』(1960年代 ?)
鉛筆と墨・紙、26.0x37.0cm、筆者蔵


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